■ 福島町の縄文時代 ~館崎遺跡~
「館崎遺跡」は、今から縄文時代前期末葉~中期中葉(約5,000~4,500年前)の集落遺跡です。
平成21年~23年の北海道新幹線の送電施設建設に伴う発掘調査で、大量の土器・石器が出土したほか、盛土遺構、竪穴式住居、道路跡等さまざまな遺構が発見されました。
特徴的な遺物に「国内最大級の岩偶」「長野県産黒曜石製石鏃」「けつ状耳飾」などがあります。これらを観察すると、縄文時代の館崎には津軽海峡をこえた村々と密接な交流をもった豊かな集落があり、道南の流通拠点のひとつとして大きく発展していたことがわかります。
令和3年7月27日に「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されました。福島町の縄文遺跡は世界遺産の構成資産とはなっておりませんが、これらの遺跡も森や海の資源を利用した縄文の暮らしを知ることができる重要な遺跡です。
■ 国内最大級の岩偶
粘土を人の形に作ったものを土偶と呼ぶのに対し、石で作られたものは岩偶と呼んでいます。 全長は約37.1センチもあり、国内で出土した最も大きい岩偶といわれています。正面からみるとかくばった五角形で、頭と足が省略されていますが人の胴体を表しています。風変わりな見た目をしていますが、体に刻まれた縦線と肩と腕のかたちは一般的な岩偶とよく似ています。 |
■ 長野県産黒曜石製石鏃
透明度の高い長野県霧ケ峰産の黒曜石で作られた石鏃(矢じり)です。北海道ではみられないかたちをした無茎凹基の石鏃で、本州で作られたものが館崎に持ち込まれたものと考えられています。霧ケ峰周辺から福島町まで、直線距離にして約620キロあり、縄文時代の人々の活発な流通の様子が伺えます。 |
■ 三角形のけつ状耳飾
「けつ」とは、扁平なリングの一端に切れ目の入ったかたちをした古代中国の玉器のことで、これによく似た縄文時代の耳飾りを「けつ状耳飾」と呼んでいます。 円形のもの以外にも楕円形や方形のものがあり、館崎遺跡の耳飾は全て三角形です。また、完成品は1つもなく、壊れたものや、磨きが完了していないもの、補修して使われていたものがほとんどです。北陸或いは松前町付近で制作され、館崎持ち込まれたと考えられていますが、詳しいことはわかっていません。 |
※「国内最大級の岩偶」「長野県産黒曜石製石鏃」「けつ状耳飾」は吉岡総合センターにて展示しています。
【吉岡総合センター「なごめ~る」基本情報】
開館時間:9:00~17:00
休 館 日:毎週月曜日、12月31日~1月5日
住 所:福島町字吉岡204番地1
電 話:0139-48-5211
■ コクゾウムシの練り込まれた土器
縄文時代後期の深鉢形土器に、推定500匹のコクゾウムシが練り込まれていたことが発見されました。土器に練り込まれたコクゾウムシは各地で発見されていますが、ひとつの土器からこれだけたくさん検出されたのは初めてです。
コクゾウムシは、米や小麦やトウモロコシなど様々な穀物につく虫として知られていますが、縄文時代のコクゾウムシはクリやドングリ等を餌としていたとされています。また、コクゾウムシは寒さに弱い昆虫です。縄文人が暖かな屋内でクリやドングリを貯蔵していたので、北海道の厳しい冬を乗り越えることが出来たのでしょう。
福島町チロップ館にて、コクゾウムシの圧痕を見ることができます。
係員にお声がけください。
※ 推定500匹のコクゾウムシが練り込まれていた土器は、現在北海道埋蔵文化財センターにて展示中です。予めご了承ください。
福島町チロップ館 基本情報
開館時間:10:00~15:00 ※ 土日祝日は16:00まで
休 館 日:火曜日・金曜日(火・金が祝日の場合その翌日)※12月1日~翌年2月20日まで冬季休館となります
住 所:福島町字白符442
電 話:0139-47-3675(福島町教育委員会直通)
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1993 福島町町史編集室編『福島町史』福島町
2018 小畑弘己『昆虫考古学』角川選書
2017 『福島町館崎遺跡-北海道新幹線建設事業埋蔵文化財発掘調査報告書-』(公財)北海道埋蔵文化財センター