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第二節 福島町地層の構成



 福島町の地質、地層の調査研究は、昭和二十二年の津軽海峡海底部の海底爆破による岩石の採取にはじまり、昭和三十七年のトンネル・ボ-リングをはじめ、国内の総力を上げて、当町内の地質、地層の研究が進められ、その結果 が青函海底トンネルの完成に結びついた。したがって福島町は他市町村に比して、この種の調査は詳細に行われ、解明されている。

 この福島町の地層は、大別すると、白神岬から字吉岡付近の大千軒岳隆起地塊の南部に当る新第三紀層中の松前層群、福山層、吉岡層、訓縫層と、その接点となる多くの断層を伴った古成層が複雑で、さながら地質の標本的地帯と、福島川流域地帯から矢越岬にかけては火山岩質の知内火山岩類が海岸近くにまで分布して急崖をなしており、さらに山地には、丸山、池の岱のような溶岩円頂の火山痕跡の急峻な地形に分けることが出来る。福島町の地質については工業技術院地質調査所の調査研究に詳しく、白神岬より字吉岡に至る間は秦(はた)光男・箕(みの)浦名知男・大沼晃助・加藤誠の共同研究になる『松前地域の地質』(平成二年・札幌〔四〕第九二号)また、福島地域については山口昇一著の『渡島福島地域の地質』(昭和五十二年・札幌〔四〕第九三号)及び『知内地域の地質』(昭和五十三年・札幌〔四〕第九〇号)が詳細を極めているので、この両著から要約すると福島町の地質は次のようなものである。

 字松浦から字吉岡にかけては白神岬に表徴されるように、大雪山系を中心に南北に展開する北海道の一番古い地層が大千軒岳で、松前群層という道南地方では最も古い地層が、前千軒岳、袴腰岳、百軒岳、松倉岳、白神岳の稜線を造って南下し、白神岬にその姿を表して、そのまま津軽海峡に貫入し、松前、福島地方の最深部の地層を形成している。これが松前群層であるが、この岩は玄武岩や粘板岩、チャ-ト、砂岩、花崗岩等である。

 この松前群層を覆うように福山層や吉岡層、訓縫層があり、福山層では輝石安山岩、流紋岩、凝灰角礫岩、凝灰質砂岩等が検出される。吉岡層は多くの断層を伴った泥岩、油母頁ゆぼけつ岩等が見られる。訓縫層は字館崎、吉岡、宮歌付近に発達して砂岩凝灰岩、輝石安山岩、砂岩等が見られるが、これら地層の変化する接点に大きな断層が存在し、松前町との町堺付近には白神岬断層、滝ノ澗付近から楚湖付近にかけての吉岡峠断層、その層が北上にて分化した吉岡川断層などの複雑な地層があり、これがそのまま津軽海峡に貫入し、海底トンネル工事の際の異常出水をもたらしていたと考えられる。さらにこの地層は澗内川流域から桧倉川にかけては板状硬質頁岩と微妙に変化している。

 福島川を中心としてその東側から矢越岬にかけては地層、地質に大きな変化を見せている。吉岡から松浦を経た町堺付近までは比較的古い時代の地層に対し、福島以東矢越岬までは割に新しく形成された火山岩主体の地層となっている。その主体は岩部岳から丸山、池ノ岱を中心としたと思われ、この山々の爆発によって形成されたと思われる岩相が多い。丸山は溶岩円頂丘岩脈の角閃石石英安山岩という地層では新しい岩質で、この山の噴火爆発がこの地域地質に大きな影響をもたらしたものと思われ、さらに池の岱についても山頂部付近は丸山と同じく火山であったらしく、輝石安山岩でその東側では角閃石石英安山岩があり、この地帯は大きな火山林立帯であったことを示していて、その近くには塩釜断層と浦和断層の二つの大きな断層があり、そこを中心として地層が異なっている。

 字日の出から女郎岬にかけては、それより以東と若干地層が異なり、安山岩質火山角礫岩が多く、女郎崎は角閃石含有輝石安山岩という、黒茶色の岩盤が露出している。

 女郎崎から岩部を経て矢越岬、さらに岩部岳から知内川支流の宿辺沢付近は広範な輝石安山岩溶岩、安山岩質火山角礫岩地帯で、そのうち岩部岳は輝石含有角閃石英安山岩で、その台上から知内町の丸山にかけての山地は紫蘇輝石普通 輝石安山岩である。これらの地域は、知内火山岩類のうちの丸山安山岩といわれる火山溶岩の凝結したものである。岩部から矢越岬に至る海岸の断崖を見ると、松倉ノ岬付近の断面 には、火山の爆烈痕を見ることができ、この地域は古い時代には噴火によって流失した溶岩によって形成された地域であることがよく分かる。

 字千軒付近の盆地と知内川上流出戸二股以南の知内川流域は、地層が前記の岩部山地より古く、福山層の砂質シルト岩と凝灰岩を伴った珪藻質シルト岩があり、この地域の知内川や支流の多くは川床が平盤となっている処が多い。その間に酸性凝灰岩が帯状に徘回(はいかい)している処もある。

 知内川本流の出戸二股から上部にかけては、地質が非常に古く、松前群層の含礫泥岩、玄武岩質火砕岩、チャ-ト、角閃石、単斜輝石岩、角閃石黒雲母花崗岩、花崗岩をはじめ、福山層輝石安山岩凝灰角礫岩、同質溶岩及び火山角礫岩、玄武岩質安山岩等が複雑に交差し、それに多くの断層を伴っているので、地層の変化が激しく、さながら地質、地層の見本を見るようである。

 これらの古生層が生成される過程では、火山のクリオ-タ・ベ-ション(摩擦)によっていろいろの鉱物も生れ、知内川流域が金・銀・満俺(まんがん)・重晶石(じゅうしょうせき)等が産出するのは、このような理由からで、特に知内川の砂金は名高い。